サーモンの種類type

さまざまな呼び名をもつ「サケ・マス類」

「サケ・マス類」は、海と川などの淡水域の両方を生活圏とする特殊な性質があります。
河川に残る個体を陸封型(河川残留型)、海に降る個体を降海型と呼び、名前が変わることがあります。

英語では海に降りるものをサーモン(salmon)、川など淡水で生活するものをトラウト(trout)としています。
日本でも、降海型を鮭・サケ、陸封型を鱒・マスと呼ぶことが多いですが、必ずしも分類できるものではありません。「シャケ」は「サケ」が訛ったものと言われています。

日本の養殖サーモン

サーモン(サケ・マス類)の種類

サーモン(サケ・マス類)の種類

日本人が親しんでいるいわゆる「サケ」は、学術的には11属66種からなるサケ科魚類のことをいいます。
そして、日本にはその11属のうち、3属(イトウ属、イワナ属、サケ属)が在来種として生息しています。

サケ属は、サクラマス、ギンザケ、カラフトマス、マスノスケ、ベニザケ、シロザケ、スチールヘッド・トラウト※1(ニジマスの降海型)、カットスロート・トラウトの8種類からなります。
サケ属8種類のうち、サクラマス、カラフトマス、マスノスケ、ベニザケ、シロザケが日本で獲れる天然のサケです。

※1 スチールヘッド・トラウトは、日本の在来種ではなく、海で養殖されたニジマスです。

様々な呼び名がありますが、簡単にまとめると以下のようになります。

サーモン(サケ・マス類)の種類

※ニジマスに関しては、改良型やかけ合わせなど様々な品種があります。

参考

魚を分類する学名について

生物の学術上の名称で、ラテン語で表記される。
種の学名は、国際動物命名規約に基づき、属名と種小名で表記される。
例えば、ウナギ(標準和名)の学名は、Anguilla japonicaで、Anguilla が属名、japonica が種小名を表す。
「種」をまとめたものを「属」、「属」をまとめたものを「科」、「科」をまとめたものを「目」という。
【引用】魚介類の名称のガイドラインについて

サケ、ニジマス(マス)、サーモンの違いについて

サケ、ニジマス(マス)、サーモンの違い

結論から言うと、明確に分けるものはありません。
いわゆる「サーモン」の定義がないことから、英語のsalmon(サーモン)なのか、ニジマスを海で養殖しているトラウトサーモンなのか・・・・
サケのことをサーモンともいうし、サケとサーモンの何が違うのかというと、実際の実物を判断してみないと、何とも言えないのが現実です。ちなみに、宮城県が推進する「みやぎサーモン」※2は、ギンザケです。

※2 2017年に農林水産省の地理的表示保護制度(GI)に登録されました。

商品名偽装にならないか心配する方もいるかもしれません。
今後、サケとマスが区別され 、価値が違うものと認識される時代が来れば、消費者保護の観点から、法改正や解釈の運用で通達等があるかと思います。


ハイブリットサーモンについて

日本では、長年品種改良が重ねられ、ハイブリットサーモンが生まれています。

特徴1

サーモンの特徴

サーモンはオスよりもメスが大きくなります。キャビア(チョウザメの卵)、フグの白子やヒラメなども同様です。養殖生産の現場では、メスとオスの間で経済価値が著しく異なる場合があります。

特徴2

サーモンの特徴

魚類の性は、人間では考えられないほど、色々な形があります。若い時はオスで、一定の年をとるとメスになる魚種もあれば、置かれている環境によって性転換をする魚種もいます。

様々な品種改良

様々な品種

特徴1と2を踏まえた上で、様々な品種改良がされてきています。
魚類(普通の魚は2倍体)は、人とおなじXX(♀)×XY(♂)型の染色体仕組みをもつことがわかっています。(Yという染色体に、オスの性を決定する遺伝子が乗っています)

生物の一般的な常識からいうと、オスとメスがいないと子孫は繁栄しませんが、長年の研究から、魚類においてYを関与させることなく、再生産させることに成功しています。

様々な品種

その方法とは意外に簡単で、受精卵に加圧処理を施すか、加温することで、Yが絡まないXXの個体(雌性しせい発生二倍体)が生まれることがわかっています。
このXXの個体を温度処理等で、遺伝的にはメスにも関わらず、性転換した雄(XX)を作ることができます。(前述しましたが、魚類の性転換は、自然界でも普通にあり得ることです)

この雄(XX)と通常のメス(XX)を通常交配させると、全雌2倍体(xx)が、受精卵に温度処理を施すことで、全雌三倍体(XXX)※3が作出することができます。

この全雌三倍体は、種なしスイカのように、生殖能力はありません。
その分、成長がいいことがわかっています。
これらの技術※4を応用して、様々なサーモンが作られています。

※3 全雌三倍体化処理は、受精10分後に受精卵を26℃に加温することで行います。
※4 染色体操作魚(性制御を含む)は、遺伝子組み換え生物ではないことから、国から利用要領について通達があります。

  • 「絹姫サーモン」は、ニジマスとアマゴあるいはイワナ間の雑種3倍体。
  • 「信州サーモン」は、ニジマスとブラウントラウト間の雑種3倍体。
  • 「魚沼美雪マス」は、ニジマス雌とアメマス雄の3倍体雑種。
  • 「アルプスサーモン」は、ニジマス3倍体。

サケ類では三倍体のメスは性成熟しないので、その分早く成長し、病気にかかりづらいという利点も。